からんころん
千夏は、奥の奥の方にぼう然と立っていた。
「千夏!」
「千夏ちゃん!」
「……なんで!?」
千夏は最初から全部話は聞いていた。
「千夏ちゃん、帰るよ!」
実果子は人々をかき分け千夏の所へ行き、手を引いた。
「…やだ!」
「こんなところにいたらだめ!」
「なんでよっ!?もう私の居場所はここしかないんだよ!それ奪う権利、実果子ちゃんにあるの!?」
「まだわからないの!?千夏ちゃんはこの人たちに利用されてるだけなんだよ!」
「わかんないよ!私はここで大事にされてるんだから!…昔の実果子ちゃんとは違うんだから!」
実果子はかまわず千夏の手を引き続け、
「…離してよっ!」
「千夏ちゃんは返してもらう」
「いいよー。そんな甘ったれお嬢ちゃん、ここに要らねぇよ」
「…!」
「万引きさせたら簡単に警察にパクられるしよ、そんなやつ要らねぇよ」
千夏は泣きそうになっている。
「あーあ、すぐ泣くし。要らん要らん」