からんころん
「元気だよ。どうして?」
「なんか…、ここにも来ないし連絡もとれないし…」
「サボってるだけだろ?」
「…私なんか怒らせちゃったか…な?と思って…」
「そんなことないだろ。大丈夫だよ、そのうちひょこっと現れるさ」
晴紀はああ言ってたけど、夜、実果子はたまらずに塾へ向かった。
千夏が出てくるのを身を潜めながら待った。
授業が終わった生徒が続々と出てくる…
ーあの人…
ーあの顔…
ーあの声…
嫌な記憶が実果子に蘇ってきた。
実果子は目を閉じ、耳をふさいだ。
「…………あっ、しまった!」
実果子が目を開けた時にはもう、塾には誰も居らず、ひっそりとしていた。
千夏ももう…帰っていた。
「ばかだ、私…」
晴紀は久しぶりに実家に帰った。
「千夏、おまえどうしたんだよ?」
「何が?」
「図書館にも来ないし連絡もとれないって、実果子ちゃん心配してたぞ」
「…私だっていろいろ用事があるんだから!」
千夏の口調が荒かった。
「まぁ…メールの返事くらいしとけ」