君色 **空色**
「いい訳は良いよ、俺は全然身を引くから」


そう言って、彼は勝手にくるっと後ろを向いてしまう


「違う!岩崎くん、違う!!」


慌てて誤解を解こうとするも、彼は後ろを振り返ったままこちらに見向きもしない

だんだん沸々と湧いてきた怒りに、私はわなわなと震えてきた

視界の端で佳奈ちゃんが私を見て、頷くのが見えた気がして、私はそのまま彼の体を掴んで叫んだ


「聞け――!!」


彼の体を掴んで自分の方に向けて、私はジッと彼を見つめて言葉を発していく


「立ち聞きするなら、最後まで聞いて行きなさいよ!!確かに、私は辰にいが好きだと言いましたよ!!言いましたとも!!でも、文系なら最後まで文脈聞いてから判断しろ!!」


気がつくと、男性2人は唖然としながら、私を見つめていた

佳奈ちゃんはと言うと、ニッと笑って、楽しそうに私を見つめていた

叫んだ事と、その光景を見た事で、私は力が抜けて、そのまま彼の前にペタリと座り込んだ


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