紺碧の地図

…レキが、見てる。


椅子の背もたれを前にして座り、背もたれの上に顎を乗せたまま、レキが私をじいっと見ていた。


「…ニ、ニーナ…」


その姿が何だか怖くて、私はひきつった笑顔でニーナに話しかける。


「無視よ、無視。あれは幻覚よ、ララ」


ニーナは食器を拭く手を休めることなく、淡々と言い放った。


…無視って言われても…。


「ララの"大切なひと"が誰なのか、気になってんのよ、あのバカ」


その瞬間、私の心臓がどくんと音を立てる。


あのとき…レキたちはそばにいたから、聞こえちゃったんだ。


ニーナは前に話したけど、レキには話してない。


それに…


「ゼン!これはどうする?」


「…あー、保留」


…ゼンにも、言ってない。



別に、言うつもりがあったわけでもないけど。


けど何か、聞かれちゃったって思うと…胸の奥がモヤモヤする。



< 231 / 545 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop