紺碧の地図
…レキが、見てる。
椅子の背もたれを前にして座り、背もたれの上に顎を乗せたまま、レキが私をじいっと見ていた。
「…ニ、ニーナ…」
その姿が何だか怖くて、私はひきつった笑顔でニーナに話しかける。
「無視よ、無視。あれは幻覚よ、ララ」
ニーナは食器を拭く手を休めることなく、淡々と言い放った。
…無視って言われても…。
「ララの"大切なひと"が誰なのか、気になってんのよ、あのバカ」
その瞬間、私の心臓がどくんと音を立てる。
あのとき…レキたちはそばにいたから、聞こえちゃったんだ。
ニーナは前に話したけど、レキには話してない。
それに…
「ゼン!これはどうする?」
「…あー、保留」
…ゼンにも、言ってない。
別に、言うつもりがあったわけでもないけど。
けど何か、聞かれちゃったって思うと…胸の奥がモヤモヤする。