紺碧の地図

「ゼ…ゼン!」


「…砂漠だって、船は走れる」


私の素っ頓狂な声がうるさかったのか、ゼンは片耳を手で塞ぎ、顔をしかめながら言った。


「砂漠専用の船なら、だけど」


「砂漠専用の…船?」


洗い終わったお皿を持ったまま、私は首を傾げる。


「まぁ、実際に見たらわかるわよ」


そのお皿を、ニーナが横からひょいと取り上げ、布巾で拭いた。


「で、ゼンは何の用?」


「…俺は…」


ゼンはそこで言葉を区切ると、私に視線を向けた。


けどすぐに、


「…いや、別に」


と言うと、ワイワイと騒いでいるみんなの輪に戻って行った。


そんなゼンの後ろ姿を、ニーナが眉をひそめて見つめた。


「…何?ゼンもララの"大切なひと"が気になってるのかしら」


ニーナの言葉に、私は「まさか」と言って笑った。


その笑顔の裏で、心臓が激しく脈を打っていることは…内緒。



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