紺碧の地図

もともと、人魚は海底に住む生き物。


暑い日差しの下では、体調を崩しやすい。



私は額の汗を拭い、深呼吸をした。


それと同時に、ゼンが声を上げる。


「…あれだ」


ゼンが指す"あれ"とは、街を囲む塀と塀の間を繋ぐように建てられた、大きな建物だと思う。


その建物だけ、他の建物と雰囲気が違う気がした。



ゼンは何の躊躇いもなく、大きな扉を開け、中に入る。


私たちもそれを追い、次々と中に入って行った。



ひんやりとした空気が、身体の熱を逃がす。


驚くことに、建物の中は涼しかった。


でも、それよりも驚いたのは…


「ふ、ね………!?」


目の前に並べられた、たくさんの船。


この建物は造船所なのか、至る所に木材が積まれ、人々が忙しく行き交っている。


「これが砂漠専用の船よ。ま、あたしも実際に見たの初めてだけどね」


船に見とれている私に、ニーナが笑いながら言った。



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