紺碧の地図
造船所にいた人たちも、困惑の表情を浮かべ、二人を見ている。
「―――、このわからずやっ!!」
「いっ…!」
がぶり、という効果音がつくほど、アルザがロイの手に噛みついた。
その痛みから逃れようとロイが手を離すと、アルザが駆け出した。
「アルザ様っ…!? 誰か!誰か彼女を捕まえてくれ!!」
ざわ、と造船所内が揺れた。
人々が戸惑いながらもアルザを捕まえようとしたけど、その腕をアルザはするりとくぐり抜ける。
「…ど、どうしようゼン…、ゼン?」
私が振り返ると、そこにいたはずのゼンの姿がなかった。
一体どこに…
「―――危ないっ!!」
誰かが叫んだ言葉に反応して、私は視線を戻す。
船に積まれていた木材が崩れ、真下を走るアルザの上に落下しようとしていた。
その声に足を止めたアルザは、落ちてくる木材を見上げ、目を見張った。
私はその光景を、遠くで見ていることしかできない。