紺碧の地図
―――すると。
「ゼンか!気に入ったぞ。貴様をわたしの護衛にしてやる!」
満面の笑みでアルザはそう言うと、爪先立ちをし、ゼンの擦り切れた頬にキスをした。
ゼンは目を見開き、ロイは呆然と突っ立っていた。
私たちも唖然として、誰一人口を開けなかった。
そんな沈黙の中、一番初めに我に返ったのは、ロイだった。
にこにこと笑みを浮かべるアルザに、鋭い視線を投げ掛ける。
「…アルザ様!急に何を仰います!」
そんなロイを一瞥したアルザの表情は一転し、不機嫌そうに口を尖らせた。
「うるさいな、ロイ。出逢いはいつだって突然なんだ」
「何ですかそれは!見て下さい、彼も戸惑っているでしょう!?」
びし、とロイがゼンを指差した。
ゼンは戸惑っているというか、この展開についていけないのか、無表情のまま…固まっている。
…あんなゼン、初めて見た。