紺碧の地図
・ゼンside・
「…参ったな」
目の前の光景を一瞥し、俺はため息と共にそう呟いた。
酒場で別れたあと、俺は情報収集の為、人が集まりそうな場所を巡っていた。
大きな広場を通りかかった時に、異変に気づいた。
微かな、何かが焦げる臭いが鼻を突き、足を止めた。
目を凝らすと、小さな赤い塊が、揺れながら徐々に大きくなっていく。
それが炎だと気づいた時には、もう勢いを増し、広場の木々を侵食していっていた。
「………」
俺は、ぐるりと辺りを見渡す。
周囲の人間は、炎を消そうと、必死にバケツに水を汲み、かけたりしていた。
けれど、炎はそんな小さな行動を嘲笑うかのごとく、さらに勢いを増す。
…このままじゃ、まずい。
緑が多いことが、命取りになりかねない。
だからといって、俺に何かが出来るわけでもない。