月影
「じゃあ、あたしの目を潰しにきた、ということですね?」


神妙に問うと、今度はどこか可笑しそうに笑われた。


腹の底なんて見えないどころか、普通に会話をすることもやっとだ。



「何だよ、怖がらねぇのか。
どいつもこいつもつまんねぇなぁ。」


怖いに決まってるじゃないか。


それでも、そんな姿を見せればこの人の思うツボだ。


ゆっくりと煙草を咥え直した嶋さんに、無意識のうちに安堵のため息が出る。



「しかしアイツも、何でこんな女が良いのかねぇ。
こんなシケた店でもナンバーワンになれねぇようなヤツだぞ?」


「クズ同然の女、とでも言いたいみたいですね。」


「ほう、わかってんじゃねぇか。」


そんなこと、今にわかったことではない。


この人は、全ての人間を見下して見ているような目をしてる。



「そんな女を指名してしまって、随分と不服そうですねぇ?」


癪に触るな、と吐き捨てられた。


帰ってくれと言いたかったが、曲りなりにも“お客”である以上、それははばかられる。


何より言えば、一体何をされるか、だ。



「ジルコニアを助けてやりてぇか?」

< 339 / 403 >

この作品をシェア

pagetop