テディベアは痛みを知らない
ドアを開けたら、なにが待っているのだろうか。

私は帰宅部だけれど、運動部に所属する友達も、文系部に所属する友達もいる。

二人の話だと……

運動部は使ったままのユニフォームや、飲み捨てられたジュース缶が放置されているところもあるらしいし……

文系部はほとんど倉庫に使っているらしいから、埃や紙束の山、あとはお菓子のゴミがすごいとのことだ。

目の前のドアは文系部のもの。つまりは埃のキングダム。

そんな人外魔境へ、私をなぜ連れてくるというのか。

なんだってそんなところへ入らなくてはいけないのか。

せめて、私を掴んでいる彼の握力が、あと二十キロほど弱ければ逃げ出せるのに。

覚悟と言っていいに違いない心の準備を、ドアが開くまでの三秒で確保する。

そして、目の前に現れた部室に私は、――言葉を、失った。

ドアを開けた途端に舞うと思っていた埃も、土砂崩れを起こした書類も、着古されたユニフォームや制汗スプレーのニオイもしない。

私の視界へ押し寄せたのは、まったくそれとは別次元の空間だった。
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