テディベアは痛みを知らない
「うそ、なに、すごい……」

思わず、名前不明の彼より先に、部屋へ踏み行ってしまう。

部屋の中央には丸い木製のテーブルが置かれ、その上には大きな裁縫箱が、蓋を開けたまま放置されていた。

テーブルには二つの椅子が添えられているけど、どちらも空席だ。

そして、奥にある小さな窓を避けた四面すべてに、高い棚が並んでいた。

驚いたのは、その棚。

背の高い棚にところ狭しと整列するのは、色も大きさも趣向も様々な、テディベア達。

見上げるそこら中に、ぬいぐるみのクマ、クマ、クマ、クマ、クマクマクマクマ……

オーソドックスな茶色のクマから、灰色、水色、ストラップ柄にギンガムチェック……

シルクハットを被ったクマに、ドレスのクマ、和服のクマ、本当にたくさんのテディベアがいた。

全体で見て、窓から入る風に揺らめく白のカーテンが、すごく様になった。

「すっごい……なにここ、ほんとすごい……」

「全部、うちの部長の手作りだよ」

開いた口が塞がらない私に、ゆっくり部屋へ入った彼が答えた。

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