しょうがい
食べ物を買いにわざわざコンビニまで来た僕だが、気付いたときには目的はそこにはなく、目線は本のコーナーに釘付けだった。

今日は漫画雑誌の最新刊の発売日である。僕はその本を手に持ち立ち読みをはじめた。

(ヨミヨミの実ってどういうことだよ?)

僕は某漫画を見ながら新たな展開に心躍らせていた。世の中には漫画を馬鹿にする奴等もいるが、僕にとっての漫画は人生に欠かせぬものである。

本を半分まで読んだあたりで、トントンと誰かが肩を叩いてきた。立ち読みをするなという、店員からの注意かとも思ったが、近頃のコンビニがそんな注意を促すはずもない。ましてや店員はまるきりやる気のない態度。ならば誰が僕の肩を叩いたのか。僕は後ろを振り向いた。

「やあ、橋本」

彼は僕の目を見るなり挨拶した。その挨拶は軽く、僕との関係が深いことを思わせる。

「やあ、北沢。久しぶりだな。何してるんだい、こんな遅くに」

「いやぁ、散歩してたのさ。そしたら腹が減ったから、ちょっと寄ってみたんだ」

彼の名前は北沢一志。彼とは小、中学の時から同じ学校で、ある意味では翔よりもお互いをよく知っている。だが高校は違い、最近ではあまり会うこともなかった。そのため、彼と出会えたことはけっこう嬉しかった。
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