しょうがい
「本当に大丈夫ですか」

いちおう僕は確認のために彼女に言い、返事が来るのを待った。すると彼女はすっかり調子を取り戻したようで、淡々とした口調で返事をした。

「ええ、本当に大丈夫」彼女はハンカチをバッグに戻した。「それより、あなたは今から学校?高校生よね」

僕は制服を身にまとっていたため、今から学校に行くのだということは誰の目にも明らかだった。しかし僕は丁寧に彼女の質問に答えることにした。

「はい、今から学校です。高校生ですよ」

「そう。高校は楽しいところでしょう。ああ、そうだ、勉強はどう?友達は出来た?」

彼女はやけに親身になって、僕を心配してくれているとみられる質問をした。彼女の口調は優しく、全ての言葉が心の底から放たれていることが、客観的にみてとれた。

「ああ、そうですね。勉強はまあまあかな。難しくもあるけれど、ついていけないほどでも……」

僕が答えるのを遮るようにして、目の前にバスがやってきた。バスは徐々にスピードを緩め、きっちりとバス亭の前で止まった。

「あっ、バスが来ましたよ」

僕はそう言ってベンチから腰をあげ、バスに乗り越もうとした。しかし、隣りの彼女はそこに座ったままで、バスに乗り込む気はないようであった。

「乗らないんですか?」

僕はバスの入口に足をかけながら振り返り、彼女に尋ねた。
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