魔王に忠義を
その前に。

俺はドーラの路地裏を進む。

最早野良犬程度しか使っていないであろう狭い通路。

その奥まった通路のほとりに、余程注意していないと気づかないであろう、それ程目立たない下り階段がある。

地下へと続く石段。

革靴の音を立てて下った先には。

「Ⅵ番か」

白髪頭、偏屈そうな丸眼鏡の老人がカウンター越しに座っていた。

彼も秘密結社の息のかかった人間。

普段は只の技師としてここに店を構えているが、その本性は秘密結社の構成員の武器のメンテナンスを担当する、ガンスミスであり刀鍛冶。

俺は仕事の前には必ずここに立ち寄る事にしている。

常に最高の状態で得物を維持しておく。

プロならば当然の事だ。

「…今度の仕事は何だ?」

彼も俺の事はよく知っている。

俺がここに来るのは仕事を請けた時だけだという事もだ。

「まぁ…要人の暗殺といったところか」

俺は言葉少なに答えた。


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