魔王に忠義を
無言で手を差し出す老人に。

「……」

俺は得物を預ける。

普通はこういう武器を手渡す際は柄を相手に向けて…ハサミでもナイフでもそうだろう。

が、俺は刃を向けて老人に得物を渡す。

理由は簡単だ。

長い付き合いになるが、俺はこの老人を信用していない。

柄を向けて渡した途端、俺の得物で俺を貫こうとするかもしれない。

この老人に限った事ではない。

先程俺に仕事を持ってきたハニワも、この老人も。

秘密結社の人間は誰一人として信用はならない。

もっと言えば他人は全て信用ならない。

両親を奪われたあの日から、俺は誰も信用などしていない。

…老人も俺の事はよくわかっているらしく、一瞬苦笑いをした後得物を受け取った。

受け取るなり言う。

「刃がだいぶ傷んでるな…チェーンオイルも不足している…2ストロークエンジンの調子も見ておこう…一時間もあれば終わる」

「40分だ」

俺は呟いて壁にもたれかかり目を閉じる。

「…待っていな」

再び苦笑いを浮かべ、老人は作業に取り掛かった。



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