魔王に忠義を
40分後。

「Ⅵ番」

カウンター越しに老人が声をかけてくる。

「リコイルスターターがちと反応が鈍かったんで、そっちもいじっておいた。始動がスムーズになった筈だ」

「……」

特に礼も言わずに得物を受け取り、俺は階段を登っていく。

と。

「Ⅵ番」

老人が俺の背中に声をかけてきた。

振り向きもせず、ただ立ち止まる。

「お前さんにこの稼業は向かないんじゃないか?足を洗うのをすすめるがな」

「向かない?」

俺は背を向けたまま笑う。

向かないとは何だ。

向くから続ける、向かないからやめる。

選り好みをできるほど、いつからこの世界は俺に甘くなった?

有無を言わさず俺を拒絶し、問答無用で両親を奪った。

俺にとって、この世界は邪悪に満ちている。

秘密結社に所属するのも、それしかないからだ。

生き延びる為、復讐を遂げる為。

俺にはこれしか残されていない。

「また来る」

それきり一言も発さず、俺は階段を登っていった。

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