魔王に忠義を
得物の手入れも終わり、本格的に仕事に取り掛かる。

まずはドーラを出て南へ。

ライストで情報収集をする。

あそこは秘密結社にとっては一番厄介なガーディアンがいる。

おとなしく降魔師の護衛だけしていればいいものを、俺達のような裏稼業の人間も取り締まるエリート軍人の集団。

率いるのはセリーヌとかいう女だったか。

霜刃のセリーヌ。

何度も秘密結社でも暗殺対象として名が挙がっていながら、誰一人として仕事を請け負おうとはしない。

凄腕なのは認めざるを得ない所だ。

だが今回のナハト・リアリーの始末が終わったら、次辺りは俺にセリーヌ暗殺の仕事が回ってくるのではないかと踏んでいる。

…ドーラとファイアル以外の殺しは気が進まないんだがな…。

ドーラの街を出て、俺は外套で深々と口元を覆う。

緑も枯れ果てたドーラの大地。

俺にとっては見慣れた光景。

俺の心象風景そのものとも言える。

…この光景を、緑豊かな豊饒の大地にしようだと?

笑わせる。

俺は一歩踏み出す。

乾いた砂が舞い上がり、強い風に巻き上げられて砂塵と変わった。

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