魔王に忠義を
野太い声と共に、俺は周囲を囲まれていた。

「貴様…ドーラからの旅行者か」

山肌…その窪みから毛むくじゃらの顔が覗いている。

ドワーフ。

地下に暮らす死霊の山の住人。

そのドワーフが見回しただけでも、ざっと10人はいるだろうか。

警戒心が強いという噂は本当らしい。

そしてその警戒心は、相手によって変わるようだ。

ドワーフの手には武器が握られていた。

石斧、鎚、槍。

それは即ち彼らが臨戦態勢である事を意味する。

人間と敵対する種族ではないにもかかわらず、いきなりの戦闘準備。

彼らが俺という人間の本性を見抜いている証でもある。

「只の旅行者ではないな…その外套の下にある血の匂いのする『それ』は何だ」

リーダーらしきドワーフがギョロリと目を剥く。

どうやら嗅覚にも優れるらしい。

「これか?これはな…」

俺は外套の下…背中に背負った得物をスラリと抜いた。

「俺の相棒だ」

< 17 / 107 >

この作品をシェア

pagetop