魔王に忠義を

とりあえずはまずナハトの居場所を押さえておきたい。

虱潰しにライストの街を歩く。

…実に人が多いライストの大通り。

真っ直ぐ歩く事さえ一苦労だ。

肩がぶつかったのぶつからないので言い争うファイアル人の姿も見受けられる。

実に品のない人種だ。

あんな連中の血も半分混じっているかと思うと嫌気が差す。

そんな事を考えながら歩いていると。

「あ…ごめん…なさい…」

俺と肩のぶつかった少女が、抑揚のない声で呟くのが聞こえた。

黒のベレー帽、同色のスーツ。

灰色のショートの髪からの香りが鼻腔をくすぐる。

俺は大通りの脇にさりげなくそれて、不自然のないように振り向く。

…見つけた！

まさかこうも簡単に遭遇するとは思わなかった。

ナハト・リアリー。

こんな街中に、しかもたった一人で行動しているとは。

大方連れの火の玉とはぐれでもしたのだろう。

無表情なその顔にも、やや困惑の色が窺える。

好都合だ。

本来ならばライスト国外で仕掛けようかと思っていたが、予定変更だ。

標的の一人、ナハトはこの人混みの中で仕留める。

彼女は戦闘に関しては素人に等しい。

俺の腕なら一撃で仕留められる…！