魔王に忠義を
俺達を取り囲むように野次馬どもが見つめている。

ライストでも喧嘩は時折見受けられるが、今から始まるのはそれとは少々種類が違う。

喧嘩ではなく殺し合い。

試合ではなく仕合。

本来ならば人前で見せるようなものではない、血生臭い職業兇手(しょくぎょうきょうしゅ)の仕事だ。

俺は一言も発する事なく。

「!!」

一気に間合いを詰めた。

暗殺者には必須の能力の一つ、無音歩行。

踏み込みの音すらさせずにアキラの間合いを侵略する!

アキラはそれを野性的なまでの反射神経で受け太刀した。

またも刃がぶつかり火花が散る。

よく弾かれないものだと感心する。

これほどの高速回転の刃を受けながら、体の芯がブレない。

余程足腰がしっかりしているのだろう。

流石に狩猟を生業とする生粋のファイアル人は違う。

俺のように半端なファイアルとドーラの混血では持ち得ない能力だ。

だが。

俺はブレードの手元のボタンを押す。

途端にブレードの刃の回転が逆回転となり、意表を突かれたアキラは体勢を崩す!

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