魔王に忠義を
アイシャが言っていた。

魔王が悪人だけを選り好んで殺していくものか、と。

まさしくその通りだ。

魔王を崇拝し、その復活を望んでいた者達にもかかわらず、真っ先に命を奪われた。

あの封印の地に封じ込められていたのは、善も悪も関係のない者。

人間などその性がどちらであろうと屠る。

この世界に滅びしかもたらさないものなのだ。

「…到着した…」

ナハトが自動二輪を止める。

俺とアイシャも地上に降り立つ。

そこで見たものは、天高く屹立する光の柱。

赤く、猛々しく、光にもかかわらず濁りを見せる閃光。

その根元には巨大な魔方陣がある。

小さな村程度なら中にすっぽりと納まってしまいそうなほどの巨大な魔方陣。

その魔方陣から、無尽蔵に迸る光。

あの光が恐らく悪意の元凶。

魔王の放つ魔力…。

そしてその魔方陣の一部が、俺達の目の前でひび割れる!

砕け散る魔方陣の一角。

硝子細工が砕けるような音。

その中から姿を現したのは。

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