魔王に忠義を
ドーラの兵器の中でも一、二を争う破壊力を持つであろう火器、竜滅砲。

かの汚竜を仕留める為にリアリー卿が心血を注いで設計し、その娘ナハトが完成させたというその兵器は、確かに絶大な威力を持っている。

だがその一方で、汚竜はおろか希少種の竜種の一部には通用しなかったという話も聞き及んでいる。

魔王が創造した悪しき生命にすら通じなかったという事実。

それは当然、その創造主である魔王にも通じないという事である。

炎の中から悠然と姿を見せる魔王の腕。

正確には全く通じなかった訳ではない。

ただ、その活動に支障を与えるほどのダメージには至らなかったという事だ。

当然俺のチェーンソーブレードも、アキラの討竜の剣も、そこまでの傷は与えていない。

腕一本とってみても竜種をも凌ぐ生命力。

これが魔王という存在だった。

…その腕、五指が奇怪な動きを見せる。

指先が不気味な胎動を繰り返したかと思うと。

「!!!!」

まるで切り口の如く指先がパックリと横一文字に割れた。

そこから赤い舌と鋭い鋸状の牙が顔を覗かせる。

魔王の指先一本一本が、意思を持った化け物と化したのだ。

言うなれば目の退化した大蛇。

或いは牙を持つ巨大なミミズ。

醜悪な姿でくねりながら、その五指の魔物は俺達を威嚇するように咆哮を上げた。

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