心 ―ハジマリノウタ―



考え付く場所を回っていくと

辿りついたのは

屋上だった。


案の定、レイは

手すりに寄り掛かって

町の様子を眺めていた。


私が彼の名を呼ぶと、

振り返って、笑ったが、

レイはどこか浮かない表情のままだった。


やはり、何かあったのだ。


私はレイの隣に同じように

手すりに寄り掛かって言う。




「レイさん、

リオさんと、会えたのですか?」




私の言葉に、黙って頷いたレイ。


いつもの彼とは似ても似つかないくらい

落ち込んでいるようだった。




「何か、あったのですか?

リオさんは、元気でしたか?」




質問を重ねる私に、レイは

真剣な眼差しを向けた。




「会ったよ、リオに。

でも、少ししか話せなかったんだ」




すると、後悔するように

首を横に振る。


閉じられた瞳に寄せられた眉。




「レイさん、

私に何かできることはありませんか?

私も、レイさんと同じように

リオさんを救いたいのです。

そして、レイさんにも、

そんな顔をしてほしくありません」




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