心 ―ハジマリノウタ―




「工場では、ドレイは

薬を打たれていたらしい。

そのときだけは、暴れると」




「それは、ユアから?」




リヴィアは無言で頷いた。


ロックは私に視線を移すと尋ねた。




「今の話、本当かい?」




私は頷いた。


本当のことだった。


毎晩、仕事の後はドレイは暴れ狂う。


薬を打たれるまで。




「薬は、ドレイを支配できるように

作ってあるようでした。

一度、ドレイが暴れたことがあったのですが、

すぐに薬を打たれて、

嘘みたいに従順に戻りました」




「その薬は何色?」



「赤、赤い薬です」




ロックは眉根を寄せて、

机に肘を突いた。


考え込むように、目を瞑る。




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