【いつきの小説講座】巻ノ弐

☆重厚な雰囲気の場合




 男は昨夜の雨でぬかるんだ地面に足を取られてしまわぬようしっかりと親指の付け根に力を込めながら、走った。

 一歩足を前に出す度に草が踏みしだかれて青臭い匂いが男の身体にまとわりつく。

 額から溢れ出る汗はそこに溜まる前に頬を伝い、顎に滑り、地面に落ちることなく風を切る男の身体にぶつかり衣服へと染み込んでいった。



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