図書室の朱、霧雨の空。
 きっかけは、一学期の終りにヒカルから告白してきたからだ。
 よく話す相手だったし別に嫌いじゃなかったからOKした。顔もいい方だし、ゆるい性格が一緒にいて楽な相手だから。
 付き合って三ヶ月。キスもセックスもしたけど、意外と紳士的だったのにはびっくりしたな。もっとこう、ガツガツしてくんのかと思ったけど、遊んでそうな外見とは裏腹に童貞だったみたいで、「すげー勉強したんだぜ」って笑った顔には、ちょっとときめいた。
 あたしも処女だったけど、恋愛で始まったわけじゃないのに、あたしはコイツと結構いい関係を続けている。

 けど、別に彼氏の誘いくらい断ることもあると思うわけよ。

「ハル~彼氏が誘ってんだよー? 行こうよ~」
 きゃあきゃあと煩く喚く友達たちにはそれが分からない。彼女は彼氏の、彼氏は彼女の誘いを断ってはいけないというバカなルールを持っているのだ。なんて、くだらない。
 ああもう、体調悪いのくらい気がつけよ。同じ女だろ。そう思っても、彼女たちは気がつかない。
 だって、彼女たちは自分のことしか考えていないのだ。
「行かねーの?」
 そして追い打ちをかけるようにちょっと寂しそうな顔であたしを覗き込んでくるヒカル。たまにこんな子どもみたいな仕草を見せる彼が可愛いなと思う。けどあたしはやっぱりあいまいな顔で笑った。
「ごめん、今日ちょっと体調悪いんだ」
 こいつら、みんなバカばっかり。
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