加納欄の記憶喪失 シリーズ5
 タクシーが来た。

 あたしは、それに乗り込み、南署に行くように言った。

 運転手は、朝早く病院から乗り込んで、警察に向かへと言う客に、不信感を感じていた。

 目が、物語っていた。

 ま、仕方ないか、まだ、8時30分だもんね。

 病院はやってないのに、出てきたし、そのまま警察じゃ、ヘタしたらあたしは、何かの事件を起こして、出頭する女だ。

 バックミラー越しに、チラチラとあたしを見てる。


失礼な。


 あたしは、視線を右横にずらし、景色を眺めようとした。

 すると、1台の車が横付けしてきた。

 不信に思って、運転手の顔を見た。

 助手席の窓ガラスが、スーっと、下りた。

 遼が、運転をしながら、こちらに向かって、拳銃を突き付けていた。

 あたしは、慌てて座席に体を伏せた。

「アクセル踏んで!」

 タクシーの運転手に怒鳴ったが、意味がわかっていないようだった。

 わかったのが、5秒後で、銃声が聞こえ、窓ガラスが割られ、何が起きたのか、キョトンとして、恐る恐る右側の車を見たら、拳銃を持ってる男が目に入ったらしい。

 慌ててブレーキを踏んだ。

 あたしは、座席から勢いよく、足場に落ちた。

 遼の車が、前に停車した。

 中から、ゆっくり遼が出てきた。

 タクシーの運転手は顔が真っ青になっていた。

 拳銃の先で運転手の窓ガラスをコンコンと叩いた。

 そして、クイッと銃口を下へおろした。

 窓ガラスを下ろせと言っているらしい。

 運転手は震えながら、遼を見た。

 遼は同じジェスチャーをした。

 運転手は震えながら、窓ガラスを下ろした。

「こ、殺さないでくれ!」

「後ろのドア開けてくれる?」

 穏やかな遼の声だった。

「殺さないで……」

「聞こえた?」

 銃口を運転手に向けた。

 運転手は小さく頷くと、後ろのドアを開けた。

 あたしは、体制を崩して肩を打っていた。


よかったよ左肩で。


「迎えに来たよ」

 遼が言った。

「それはどうも。迎えに来たんなら、もう少し丁寧に出来ないの?」

「丁寧だったろ?狙えたのに、誰も殺ってないんだぜ」

 と、言って運転手を見た。
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