加納欄の記憶喪失 シリーズ5
ふざけんなっ!


窓ガラスも割ってるくせに!


遼が手を差し出して、あたしを外に立たせた。

あたしは、運転手をチラッと見た。

顔面蒼白でこちらを見ないようにただ真っ直ぐ前を見て、何か祈っているようだった。

「さて、参りますか、お姫さま」

遼が、まるで執事のように、お辞儀をする。

逃げるわけにはいかなかった。

逃げれば、運転手が、即殺される。

運転手は何としてでも生きててもらわないといけなかった。

警察に連絡をさせる為に。

もちろんピアスの発信器は、もう作動させてある。

ただ、今の時間に、誰かが覆面車に乗っていれば気付くだろうけど……。

事件が起きていない限り、この時間に車を運転してる確率は99%なかった。

苫利先輩に言って、覆面車だけじゃなくて、個人に分かるように、何か作ってもらわなくちゃ。

「警察に連絡するのは自由だけど、俺達の車が消えてから連絡入れろよ」

遼は運転手に、そう言うと、あたしのみぞおちに1発入れ、倒れたあたしを抱き上げて、車に乗り込んだ。




鼻の辺りに嫌な臭いがした。

あたしを起こすために、何か薬品を嗅がせたらしい。

そして、あたしは、目が覚めた。

意識がもうろうとする中、自分がどこにいるのか、辺りをうかがった。

どこの場所かは、記憶があった。

遼の経営する店だった。

今いる部屋もあの場所。

贅沢なご馳走を沢山出したVIPルーム。

あたしの好物に眠り薬仕込んで、あたしは眠らされた。

「なに?あの時の事、また再現させたいの?」

あたしは、遼に冷たく言った。

「いや」

「昔話はもう終わったと思ったけど」

「昔話ね。未来の話しは?」

「未来?」

「そ、俺と欄の」

「近い未来ならわかるわよ」

「ん?」

「遼は逮捕されて、あたしは、安息の日を迎えるの」

「残念。その未来はないよ。なぜなら、俺は逮捕されないから」

「日本の警察を、あの2人の刑事を馬鹿にしないほうがいいわよ」

「へぇ、随分あの2人の刑事に入れ込んでるんだねぇ」

遼の話し方がいつになく丁寧で、気持ち悪かった。

「尊敬してるの」

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