加納欄の記憶喪失 シリーズ5
 タクシーを奪った遼は、部下に運転をさせ遼の家と言っていたビルに向かっていた。

「もう、何も言わないで・・・結論は出てるの。私は、日本に、あの警察署にいたいの」

「あの刑事がいるからか?」


 あの刑事。


 その言葉だけで、あたしの頭の中は、大山先輩になる。

「俺より、アイツが好きか?」

 ビルに着くと遼は無理矢理タクシーからあたしを連れ出すと、ビルのエレベーターの最上階のボタンを押した。

「遼!いい加減に!」

「欄!答えろよ!!アイツが好きなのかよ!」

 遼の瞳が真剣だった。

「・・・好きよ。尊敬もしてる。今は、誰よりも、あの人が1番好き。毎日、あの人の役にたちたいって、思ってる。今は、あの人をあんな目にあわせた犯人を憎んでる」

「俺より?」

「遼、腕をはなして」

「孔明師範より?」

「遼!」

「何でだよ、何で!」

「遼!しっかりして!腕を離してったら!」

「イヤだ。イヤだ、イヤだ、イヤだ、イヤだ!」

 遼は、奥のVIPルームと書かれた個室の部屋へあたしを無理矢理入れ、力ずくにターンテーブルに押し倒した。

 ターンテーブルの、ちょっとした段差に腰をしたたかに打った。

 肩を押さえつけられたけど、腕が動かないわけではなかった。

「遼離して。肩が痛いわ」

「お前を犯してやる」

 遼の瞳が怒りに満ちていた。

「お前が、アイツに抱かれる前に、俺が犯してやる!」

 遼を、怖いと初めて感じた。

「遼!しっかりして!」

 何を言っても、遼には聞こえてないようだった。

 そして、あたしのブラウスを左右に引き裂いた。

「イヤッ!!」

 あたしは、左手で、遼の顎を叩き、右手で、胸の急所に一撃を入れた。

 遼は、一瞬息ができなくなり、ガクンと、床に膝をついて、呼吸を整えた。

 その隙に、あたしは、ターンテーブルから飛び起きて、ドアに向かって走った。

 ドアノブに手を掛けたけど、鍵がかかっていて、ドアは開かなかった。

 迷ってる暇はなかった。

 一瞬で呼吸を整え、右足でドアを蹴破った。

 ドアが破壊され、あたしはVIPルームから逃げ出した。

 出た瞬間に愕然とした。

 目の前に、両脇に大男を従えた、孔明師範が立っていたのだ。

「久しぶりですね、欄」

「・・・・・・」

「元気でしたか?」

 孔明師範が語りかけた時に、遼が慌てて追いかけて来た。

 前に孔明師範、後ろに遼。

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