加納欄の記憶喪失 シリーズ5
「鍛え方が違うからな」

「どうも、すみません。弱くって、これから毎日頑張ります。ムキムキになって、大山先輩を見返します」

 少しムクレテみた。

「いいんだよ。欄はそのままで、欄は俺が守ってやるから、そんなに頑張るな」

 そう言って、あたしの頭に手を置いた。

 あたしは、その言葉が無償に嬉しくて、涙が止まらなかった。

「そう言えば、質問の答え言ってなかったよな」

 大山先輩が、突然思い出したかのように言った。

「え?」

「欄の弱点、は、どこでしょう」

「あ、あれは!もういいんです」

 あの時のことを思い出して、恥ずかしくなった。

「へぇ~、もう、いいんだ」

 と、意地悪そうに、大山先輩が答える。

 でも、あたしの頭に乗せた手を、人差し指だけにし、ゆっくり頭から下ろしてきた。

「あの、大山先輩?本当にいいんですから」

「まだ、答え言ってないけど?記憶戻ってなかったら、どうするんだ?」

 そう言いつつも、大山先輩の指は、コメカミへ走り、更には耳に触れ、耳の前ではなく、ちゃんと後ろをスススーッと首筋にそって走らせた。

「ここだろ?」

「アッ!」

 思わず声が出てしまった。

 あたしは、慌てて、口を手で隠した。

「正解か?」

 大山先輩は、あたしの手首を掴んで口からはなした。

「正解、です」

「じゃ、俺の記憶が戻ったってことだな」

 そう言いながら、大山先輩が、顔を近づけてきた。

 あたしは、ゆっくり瞳を閉じて、少しだけ顔を上げた。


大山先輩と、やっと心が結ばれるんですね!?


あたしの思いが、やっと実るんですね!?


「欄ちゃん、大山先輩知らない?」

 突然ノックもしないで苫利先輩が入って来た。

 大山先輩は、自分のおでこを、おもいっきりあたしのおでこに、ぶつけた。

 ガツって音がした。


いっ、たぁぁぁい(>_<)


「あ~!何してんですかぁ」

 苫利先輩が、驚きの声をあげた。

「何って、欄が体調悪いみたいだから、熱計ってたんだよ。お前、何なんだよ」

 あたしの心臓は、バクバクしていた。


なんで?

< 48 / 50 >

この作品をシェア

pagetop