Pure*Love―透明人間が恋をした―
「…下品な連中共だな。」
黒いシルクハットをクイッと下げ、黒いスーツに身を包んだ背の高い男が呟いた。
「ジョナサン…」
「大丈夫か?」
黒い皮手袋がピッピの前に差し出される。
「ジョナサン…ありがとう。でも、こんなところが誰かに見つかったら大変だよ。」
黒い皮手袋を掴み、起き上がる。
「ジョナサン、君はクリスタルなのに…。」
真っ直ぐに、しかし少しだけ寂しげな目をして見つめられているのが分かる。
「…よせよ。好きでクリスタルになった訳じゃない。」
「でも…君が僕みたいなクォーツと関わりがあると知れれば…」
「ピッピ。」
強く、誰もが口をつぐむような、威圧感のある声でジョナサンは制止した。
低く、よく通る彼の声は、少し張り上げるだけで万人の動きを止める。
「…ごめん。君がそんな奴じゃないってことは解ってるんだ。でも、僕は君が心配なんだよ…。」
「自分と同じ思いはさせたくないってか?」
ジョナサンの問いに、ピッピはコクリと頷いた。
「そんなの…俺はお前に何もしてやれてないんだからな…。」
寂しげな声でそう呟いた後、ジョナサンは向きを変えて去っていった。