彼と彼女の方程式
おとなしくなったあたしを見て掴んでいた手から力を抜く。
「…ったく。ホント、抜けてるっつーか、鈍臭いっつーか…。」
あたしの膝にガーゼを被せながら溜め息混じりにそう呟く。
『…っ!!そんな事な…「あるだろ?」
た、確かにちょこっと…ほんのちょっとだけ人よりドジかもしれないけど…。
黙り込むあたしを見上げる綺麗な瞳。
…っっ!!!
『無駄に色気を出すのやめてよ!!』
「うぉっ…」
そう言って座っていたソファーから勢いよく立ち上がると驚いた湊が尻餅をついた。
あたしは顔を見られないように急いで背を向けた。
「はぁ!!?」
意味がわかんねぇ、とか言ってるけど背中で受け止めて赤くなる頬を抑えた。
おかしい…。
おかしい…。
ただ目が合っただけ。
それだけの事で狼狽えてる…。
なんなの?
こんな事今までなかった。
今までだって幾度となく顔を合わせて、向き合って、話だって数えきれないくらいしてきた。
なのに…何?
なんなの?
心拍数がおかしい…。
顔が熱い。
あたし…病気…?