婆ちゃんの恋物語
思い出したら、身体が震えて来て、涙出て来ててん。
どないしてるやろ、壕に上手いこと、おじいちゃん入れて、避難できてるやろか?家は、どないなってるんやろ。


「お母ちゃん、どないしてるやろか?」

「あんなに、煙があがってる。大阪は、あっちやなあ。」

靖ちゃんが指さした先、煙が黒々と上がってる。
トラックは、ガタガタ北へ登って行ってた、
空爆の惨状が、走馬灯のように、くるくる移り変わり行く。

誰もが、言葉を失って荷台に揺られてたん。

山沿いの道に出て、嫌な臭いも、音も 無くなって、春前の青々した、山並みが、別世界に来たような錯覚に陥りそうだったん。

「着いたみたいやなあ。」

「寝る場所あるんやろか。」

人が、ゆっくり荷台から降りて行ったん。
巧君が、靖ちゃんを引っ張って、降りて行った。
「麻ちゃん、何をしてるんや。早よ降りておいで。」

誠さんが、声をかけてくれはってん。

「家、家どないなったんやろ。」

「明日、一緒に行って見よう。」

荷台から降りる、私を抱き抱えるように、降ろしてくれたん。
嬉しくて恥ずかしいはずやのに、その時、その事よりも、大阪の家の事が、気になって、気になって、

「大丈夫かあ。少し、横になり。」

農家の空き家に、皆ぞろぞろ、入って横になったり、座りこんでた。うち、誠さんに、おんぶされて、玄関から、土間に入り、居間にあがったん。
「靖ちゃんのお母さんは、この近くに来てるん?。」

「もうちょっと先やと思う。行ってみよか?。」
靖ちゃんのお爺ちゃんの家が近くにあるんや。
うちは、横になりながらその話を、聞きながら、気が遠のいて行ってた。
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