婆ちゃんの恋物語
春が、そこまで来ているんやなあ。

新芽がチラホラ見える草木を見ながら、昨日の事が、夢であったような。恐い夢やったような、そう思いたい気分になってたん。

屋根だけが足下に、岩が屋根の上に城の石垣みたいにそびえて、柱だけが岩に支えられて立ってたん。
其処にあるはずの4軒の家は、殆ど土砂と岩で破壊されてたん。

お爺ちゃんの家は、鶏小屋と、便所に、蔵を残して何も無くなってたん。呆然として、声も出えへんうちの代わりに、巧君が、すいませんと叫んでくれてたけど、鳥の鳴き声しか聞こえてこうへんかったん。

「靖ちゃん、小学校やなあ。行くで、皆そこに居てはるわ。」

巧君は、蒼白になったうちの顔を見て、そう言うて慰めてくれたん。

「おんぶしたろ、顔か゛、青いわ。坂道やから、ほら、」
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