婆ちゃんの恋物語
誠さんは、うちに元気出させようと、笑い話までしてくれてた。
嬉しいはずやのになあ。山から下り始めたら、空襲の爪痕が、段々大きくなって、
誠さんも、うちも、無言になってしもたん。

道に、人が横たわって、黒い人形が、焼け崩れた民家の中、転がってる。あれは、何とも聞かず、トラックに揺られてた。


何も無い、見覚えのある家は、傾いてた。

トラックを下りて、真っ黒な炭になった、柱、
ただ、愕然として、体が震えて来てたん。


「この辺りのはずやなあ。」

誠さんの声が、聞こえたけど、目の前の惨事を、心に受け止めれなくて、夢やと、頭半分、逃避してたん。出ないと、立ってられへんかったから。
「なんもないわ。」

「学校に行ってみよか?。」

誠さんも、言葉を無くしてたんやなあ。
一言言うたら、トラックを動かしはった。


校庭にトラック停めて、誠さんに手を引かれて校舎に入って行ったん。


「麻ちゃん、麻ちゃんやなあ。」

町内の婦人会の土井のおばさんやった。
色々、前から世話を焼いてくれてたん。

病院に、お爺ちゃんが居る時も、何度となく見に来てくれたと、お母さんが言ってたんを思いだした。

「あの、うちの家族は、何処に居てるか、わかりますか?。」

「解らへんねん。うちのお父ちゃんも、娘も、まだ連絡ないねん。」
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