婆ちゃんの恋物語
「お父さんとお母さんを、ほって行けるん、傍で守ってあげたらええやん。」

「住んでるこの場所取られたり、壊されてまう前に、守らないとあかんやん。」

上がり口に腰を下ろして、チラッとこちらを見て言いはったん。

うち、嫌や、親類のお兄ちゃんにおっちゃん、赤紙来て戦地に行きはって、半年も経たへんうちに、白木の箱が届いたて聞いてたから。骨壺に、髪の毛と写真が入ってただけやって、兵隊になるなんて、死にに行くんと同じやん、誠さんの反戦思想に共感して、心の中で、最近、戦争が、早く終わってくれる事ばかり願ってしまってたから。

「誠さんは、戦地に行かへん言うてはるやん。」
「僕は、日本人になりたいねん。」


兵隊さんになったら、日本人なん? うちには、その時、その重みが解らへんかってん。

「うちは、知ってる人が、箱になって帰ってくるん、見るん、もう嫌や。」

「僕は、元気に帰ってくるで。」

うちの大好きな、澄んだ瞳で、なんでそんなに、真剣に言い切るん。

「もう、泣かんといてなあ。僕、靖ちゃん、好きやから、僕、日本人になりたいねん。」
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