婆ちゃんの恋物語
「何を、こら、菓子など食べる時間ではない。

あっ、少尉、すいません。おられたんですね。」
机を枕に寝入ってた、大谷さんが、寝ぼけ眼で、怒鳴るまで、一人一人、数分間の青春を感じたと思うわ。



この歳になっても、不思議とあの日の金平糖の色や、形の歪さまで、何故か、1コマ1コマ、覚えてるんよ。

恋をしてるなんて、解ってるような、解らんような、あの気持ち。




3月13日、夕方、お婆ちゃんが、ヒョッコリ、芋やら、少量の米と、うちらの着替えを持って来てくれたん。

「合い服を、家に帰って、出して来た。着れるん少のうなって、これだけやねん。靖ちゃん、にも一つブラウスあげてな。
家に、昨日から、戻りましたんや。

まだ、補強して貰たり、修繕せなあかんところだらけで、あんたら、後3、4日待ってて、また迎えに来るさかい。」

「お爺ちゃんは、どないなん。」

「寝たきりで。物が少し食べれるようになってますけど、口も聞かれへんし、赤子と同じですわ。悪いんやけど、あんたも靖ちゃんも、帰って来たら、お母さん手伝ってなあ。警報なったら、うちと二人で、お爺ちゃん抱えて、壕に入るんやけど、重いから、えろうて、」
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