DOLL・・・ ~秘密倶楽部~
二人、手をつないだまま
車に向かって歩いていると
前方から二つの黒い影が
近づいてくる
「ヤ-ベ...」
柊音は立ち止まり
辺りを見回し
「コッチ...」
小声で言い
乙羽の腕を引っ張る
...ぇ
柊音に引っ張られるまま
柊音と共に岩陰に隠れていると
カップルらしい男女が来て
浜辺でイチャつき始める
『キャハハ...
ヤダ、もぉ...』
「チッ...
他所でやれよ」
「//」
しばらくはカップルの様子を
注意深く伺っていた柊音だが
二人の様子から長期戦を覚悟したのか
柊音は大きなため息と共に
その場に腰を降ろすと
「...あの人たち
知ってる人?」
乙羽が不思議そうに尋ねる
「俺が? 何で?」
「...だって
プライベートビーチだって...」
「ぁぁ...
まぁ...
いずれはな...」
「...いずれは?」
「...てか
どうする?
アレ、鑑賞してく?」
二人は浜辺で抱き合い
いいムードになっている
「//」
乙羽は顔を真っ赤にして
首を横に振る
「じゃぁ...」
柊音は辺りを見回し
「ちょっと厳しいけどッ」
そう言うと柊音は
スッと立ち上がり
浜辺の男女とは逆の方へ
身をかがめながら歩き出し
しばらく行くと
乙羽においでと
手招きして合図を送る
乙羽がゆっくりと
柊音の元へ
行こうとした瞬間
ガサササ
砂が枯れた葉っぱにかかり
音を立てる
『ヤダッ! 誰かいる?』
女が茂みの奥を指さす
すると男は
『クソッ!
誰だよオイッ!!
出て来い
いい趣味してんじゃねぇか』
そう言い草むらに向って
歩いてくる
ぅそ...
どうしよう...
すると乙羽の手を摑まえてた
柊音の握力が緩み
男と対峙する覚悟を
決めた様子で出て行こうとする
ダメ...
乙羽は柊音の手を
ぎゅっと強く握り返す
...トワ
「ダメ...
行かないで...
お願い シオン...」
涙目で訴える乙羽
すると柊音は乙羽の手を
強く握り返し
どんどん奥へと進み
自分の背より少し高い
防波堤の下にたどり着く
ここが行き止まりで
この防波堤を上るしか
逃げ道はない
「俺が先に上って
引き上げるから」
そう言うと柊音は
側の飛び出した岩に足をかけ
木の枝を使い器用に防波堤を
よじ登るとすぐに下にいる
乙羽に向かって手を伸ばす
「ほら」
差し出された柊音の手に
乙羽は突然、柊音に
怪我をさせるんじゃないかと
不安になる
だって...
柊音は身体を何かで
つないでる訳でもなく
ただ、側の木の枝につかまり
身体を防波堤にひっかけ
乙羽に向かい手を伸ばしている
あたしの重さで柊音が
落ちるかもしれないと思うと
乙羽はその手を素直に
掴むことができない
柊音さえ
見つからなけば
大丈夫なんじゃ...
そんなことを考えてる間に
男の気配がすぐ背後に迫る
「トワ、早く」
焦った柊音がもっと
手を伸ばす
「ぁたしは大丈夫だから...
柊音... 先、行ってて」
「は? 何言ってんだよ
早く手を伸ばせよ」
「でも...
落ちて怪我でもしたら...」
「大丈夫...
ちゃんと掴んでるから...
だからほら、早く...」
『クッソッ!!
やっぱ、誰かいんじゃん
どこだよ!!』
声を聞きつけた男が
暗闇の中、近づいてくる
「頼む、乙羽...
俺の手を掴んで...」
躊躇う乙羽にすかさず
「俺を見くびるなよ
自分だけ逃げられればいいなんて考え
持ってないから.....」
その言葉に乙羽は
柊音に向かって手を伸ばす
すぐ背後に迫る男の気配
『見つけた!!
オイッ! コラ、待て!!!』
男が乙羽に
飛びかかるよりも
一瞬早く柊音の方が
乙羽を引き上げる
「...ヤ..ベ...ハァ...
焦った...ハァ、ハァ...」
間一髪、乙羽を
自分の元へ引き上げた柊音は
乙羽を胸に抱いたまま
その場に座り込む
「ハァ...ハァ...
ヤベ...
マジ、間一髪...」
心臓がバクバクと
暴れている
乱れる息を無理矢理
整えながら下を覗き込むと
男がブツブツと文句を言いながら
浜辺へと戻って行く
「ハァ..ハァ...
マジ、危なかった...
ったく...
何、考えてんだよ...」
「ゴメンナサイ...//」
申し訳なさそうに
うつむく乙羽
「俺...
これでも...
アイドルの前に男だから
乙羽だけ置いてとか
ありえないから...」
「ぅん...
ごめんね。
引き上げてくれて
ぁりがとう。」
胸の奥がキュウとなる
「...行こ」
乙羽の手をしっかりと握り
車に向かい歩き出す柊音
車に着くと柊音は
助手席のドアを開け
乙羽を助手席へ座らせさると
シートベルトを締める
「ぁの...柊音...
あたし...後ろに...」
「却下!!」
「却下って...//」
「いいから...
ここに座って...」
「...でも//」
バタンッ
柊音が運転席に座り
シートベルトを締めると
ドキン...
ぇ...
運転席って
こんな近かったけ...?
乙羽は
赤くなった顔を背ける
真っ暗な空間に
オーディオのイコライザーだけが
曲に合わせて踊る
少しだけ開けた窓から
潮の香りが漂ってくる
フードを深くかぶたまま
下をうつむく乙羽
そんな乙羽の髪の毛を
時折、イタズラな潮風が
フワリ舞い上げる...
「そうだ
何かDVDでも借りてく?
俺、観たいのがあんだけど」
「ぅん」
「森ちゃんは?
何か観たいもんとかある?」
「ぅーん... ホラーかな」
「ホラー? マジ?」
「?」
「じゃ、じゃんけんね」
「?」
~じゃんけん ぽん♪~
結局、柊音は帰りに
レンタルショップでホラーを借りるはめに。。。