残酷なラブソング

「あ、ごめん!」

手を引っ込めて、
啓太くんと距離をとった。


そうだよね、確かに。

他人に、しかも、異性に髪を触られる
なんて嫌だよね。

啓太くんの年齢はお年頃なわけだし。



私が、一人頷いていると

啓太くんがいきなり足を伸ばした。


その足先が、しゃがんだままの

私の元まできていた。


「ねぇ」

急にクールになった啓太くんは、
見下ろすように私を見る。

臥せた長い睫毛が綺麗な肌に影を落とす。


「はい?」

「彼氏とかいたでしょ?もちろん」


その質問を何度されたことか。

その度に、恥ずかしくて
つい顎を引いてしまうんだ。

愛未いわく、私の癖。


もちろん今も顎を引いてしまう。


その反応を見た啓太くんは、

苦笑を浮かべた。


「え、まさか、いなかった・・・・とか

言わないよね?」




その、まさか、なんですよね。



「なんで?」


なんで、と言われましても。

こっちが聞きたいくらいなんだけど。


「好きになれる人がいなかった。」


この返事も毎度おなじみ。

私の恋愛話の流れはパターン化
されてきてしまっている。


「へぇ?ずいぶんじゃん」

生意気な顔して長めの半袖を
肩まで捲くり上げた啓太くんは、
私に手を差し出した。


「な、なに?」

一瞬、手を預けようと動かしたが
すぐに引っ込めた。


「なに今更警戒してるの?」


啓太くんの顔を見上げると、
目が合った。

これまた下から見上げると、格別。

本当にかっこいい人って
どこから見てもかっこいいんだ、なんて。


私は、観念して手を預けようとした。

そこで気付く。


自分でも気付かないうちに、
緊張からか、手が湿っている。


また、その手を引っ込めた。


さすがに疲れたのか、

啓太くんも手を引っ込めた。


「今度は何?」

面倒くさそうに笑って、

啓太くんは私の目線までしゃがんだ。


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