走り出せ、コスモス*



カッ  カッ――

教室の床は 廊下ほど響かない


あの足音


その音がするたびに、私の心臓は鼓動を早める

自転車で坂を上がってるときとか

マラソン走ってるときとか

それくらいに
ドクンドクンと深く早い


先生は、何も言わずに私の方に手を伸ばした

や…

息が…つまる――


声が、耳からすっと入ってきた

「さっき頭打ったでしょ 大丈夫?痛くない?」

先生の手が髪に触れる

びくっとして 目を閉じる


「跡とか残らないといいけど…

 結構すごい音したよね」

なんで…そんな落ち着いた声なの?

私は こんな、どっくどっくして死にそうなのに


そして、手は患部に触れた

「…っ」


痛…

目を閉じたまま、その甘い痛みに耐えた

少し、鼓動がおさまってきた


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