悪魔のいる教室
「む、無理やり乗せたら、今度から佐久間じゃなくて悪魔って呼ぶぞ!? い、いい、いいのか!?」


乗りたくねぇって恐怖心が狂わせた思考回路は、


「……てめぇ、誰に向かってそんな口きいてんだ」


マジギレ寸前の悪魔大王様の凄まじいオーラにより、一瞬で冷めきった。


絶体絶命にも関わらず妙に冷静な私は、ギュッと音が鳴りそうなくらい強く歯を食い縛ったものの、殴られる事はなく。

だけど無理やり原チャリの後ろに座らされた。

これは、危機一髪と言っていいのだろうか……。


「掴まれ」


いつにも増してトケトゲしい低音に、学ランを力なく掴むと「振り落とすぞ」と脅され、勢いよく胴に両腕を回した。


見た目よりずっとガッチリしてる悪魔の体。

広い背中、硬い筋肉。

女と男ってだけで、こんなに体の作りが違うもんなのか……。


初めて抱きついたわけでもないのにしみじみとそんな事を思っていると、ブロンとエンジンが鳴きだし、私の肩はリバウンドしたボールのように跳ね上がった。

悪魔にしがみつく銅像の図、完成。


「……行きてぇとこあるか?」


背中越しに、さっきよりほんの少し優しい声がエンジン音に混ざって私に届いた。


「な……えーっと……あ、そ、そうだ。今日はバスケしに行かないの?」
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