悪魔のいる教室
出発直後こそ悪魔にしがみついていた私だけど、1分も経つと恐怖心は無くなっていた。

と言うのも、走行スピードが自転車と変わんないくらいだったから。

それはもう、この私さえ『遅すぎだろ!』とツッコミたくなるくらい。


けど、言えなかった。


だってわかってたから。

私の為にそうしてくれてんだって。


しかも、私は顔が隠れてるけどヘルメットを貸してくれた悪魔は……超恥ずかしい思いをしてんじゃないだろうか。

そう思うと、とてもじゃないけど『遅すぎ』なんて言えなかった。


移動中に悪魔と交わした言葉といえば、家までの道案内くらい。

それでも、原チャリに乗ったまま、まともに言葉を発せたというのは私からしたら大股10歩分くらいの進歩で。

立ち乗りして『ひゃっほー』なんて言える日もそう遠くねぇんじゃねぇかと思った。


無理やり乗せられたのには腹が立ったけど、結果的には悪魔に感謝するべきなのかもしれない。

そう考えると悔しい気持ちになったけど、ちょっぴり嬉しかった。


私は悪魔に甘いのかもしれない。

だって悪魔が私を気遣ってくれる度に、大抵の事は許してしまうような気がする。


けどそれは悪魔も同じで。


悪魔がそんな風に私の事を考えてくれてるから、私もどうにかしてそれを返そうとしてんのかもしれない。

でも別に『そうしなきゃ』って意識してるわけじゃない。

自然にそうなってる感じ。


なんか……こういう関係っていいな、と思った。
< 153 / 201 >

この作品をシェア

pagetop