悪魔のいる教室
千代ちゃんって、ホントにいい子。

ふわふわしてて、誰にでも優しくて。


1年の時はクラスが違ったから話した事さえなかったけど、今では人見知りな私も千代ちゃんにはだいぶ馴染めてる。


席が前後になった時も、千代ちゃんでよかった〜って安心した。

けどその後すぐに悪魔が隣だと知りどんだけ落胆した事か……って、しまった!

悪魔の事は考えないようにするんだった……。





いつも向かう駅とは反対側の方向に10分程歩くと、住宅街の中にとあるアパートが見えてくる。

イトコが住んでいるのは、ここの4階。


「階段だる……」


このアパートはデカイけど、オンボロ。


今時エレベーターもついてないなんて……マジ使えねぇ。

今は春だからまだいいけど、夏になったら絶対脱水症状だよ。怖えぇ。


ふくらはぎが千切れんばかりにギュウッと張って息もあがってきた頃、やっとこさ4階に辿り着いた。


24号室。


ピンポンを押し、手を団扇代わりにしてやや火照り気味の顔を冷ます。


…………。

…………。

…………あれ?


いつまで経っても開かないドアを見つめ、高速まばたきを繰り返した。


おっかしいな。
昨日ちゃんと連絡したのに。

もしかして、寝てる?
……ありえる。


ピンポンダッシュしてやろうかともう一度ボタンに手を伸ばした時。

ガチャリ、とドアが少し開いた。


そのままドアはゆっくりと弧を描いて──


「タツに……」


言い掛けた言葉はどこかに消え、私は、固まった。
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