悪魔のいる教室
その昔、私の近所に住んでたタツ兄は、小学生時代“悪ガキ”で有名だった。

そんなタツ兄がさらに進化をとげたのは、中学に入学してから。

真っ黒だった髪を金に染め、同じく派手な友達とつるんでんのをよく見かけるようになった。


親が共働きのタツ兄の家は“不良達の溜まり場”みたいになってて、学校をサボってよく集まってたみたい。

それを大人達は疎ましがってたし、私の知ってる子はみんな、タツ兄を恐れてた。

私が知ってる子ってのはつまり、タツ兄の後輩に当たるわけで。

“後輩=タツ兄を恐がる”
そんな方程式が、いつの間にか私の中で出来てあがってたらしい。


「ひなた、わざわざありがとな」


引っ越し祝いに私が持ってきたお菓子の山をタツ兄は嬉しそうに少し持ち上げて、空いてる手を私の頭にポン、と置いた。

じんわりと伝わる温かい熱が、なんだか懐かしい。


タツ兄は昔からこうしてよく、私を可愛がってくれた。


私が男の子に意地悪された時は必ずタツ兄が助けてくれたし、近所ですれ違う時も『よぉ』って優しく微笑みかけてくれた。


みんなから恐がられてるタツ兄は、本当はすごく優しい頼れるお兄ちゃん。

それはタツ兄が中学生になってからも、そして今も、ずっと変わらない。


だから。

タツ兄が中2の秋に引っ越してしまった時、私はすごく寂しかったんだ。
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