悪魔のいる教室
『知りたいから』とか『仲良くなりたいから』とか、それっぽい言葉はいくつも浮かんだ。

けど実際、私が感じてるのはそういう直接的な感情じゃなくて。


そんな嘘、悪魔はすぐ見抜いてしまうと思った。

そのくらい悪魔の瞳からは“真剣”を感じた。


「……わからない」


今にも消えそうな声で答えた私を、悪魔はジッと見つめた。

だけどすぐに目線を前に戻し、「そうか」とこれまた感情の読めない声を落とした。


「んでも」


少し大きくなった私の声に、悪魔は再びこちらを向く。

視線が絡み合う。


「“笑顔が見たい”とは……思う……」


あからさまなデクレシェンド。


だけど、嘘じゃない。

私わけわかんない事言ってるって、言いながらすごく恥ずかしくなっただけで。


『笑顔が見たい』っていうのは私の素直な気持ちだった。

金髪くんに見せてた、あの優しい笑顔。


それって変換すれば『仲良くなりたい』って事になるんだろうけど、微妙に違うような気がする。

漠然としすぎててなんて言ったらいいかわかんないけど、私は違うと思った。
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