悪魔のいる教室
帰り道は、無言。


こうして悪魔と夜道を並んで歩いてるなんて、ちょっと前なら信じられない光景だな。


教室にいる時より距離がずっと近い。

そう考えると、変に緊張してしまう。


視界の隅に映る悪魔の存在に、ドキドキしすぎて心臓が口から飛び出そう。


けど、いつもの“ハラハラ”じゃない。

なんかもっと……こう、落ち着かない、ソワソワした感じ。
落ち着かないけど、でも全然嫌じゃない。


自棄に足下がフワフワしてて、いつもどうやって歩いてたっけ、なんて考えてた。


体の右側が、なんとなく熱い。


「なぁ」


歩き方が変にならないようそっちに意識を集中させてた私は、突然降ってきた声にビクッと肩が跳ねた。


見上げると、街灯に照らされた悪魔の横顔があって。

全然こっちを見てないから空耳かと思ったけど、一か八かで「何?」って返事してみた。


それでも悪魔はこっちを向かず、ずっと遠くを見つめてる、そんな目をしてて。


やっぱ空耳!? と不安になってあたふたしてると、悪魔が口を開いた。

なにげない、普段と変わらない口調で。







「お前、竹田が嫌いなのか?」
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