悪魔のいる教室
「……あんま、好きじゃない……かな」


『嫌い』とは言えなかった。


だって悪魔は、タケティーを嫌いじゃない。

少なからずクラスメートよりは信頼してる。


自分が信頼してる人の陰口言われるって、いい気持ちにはならないもんだ。

例えば、私が誰かにタツ兄の悪口言われたりしたら嫌な気持ちになるのと一緒。


そう考えると無闇に“嫌い”なんて口にしちゃいけない気がした。

言わなくても悪魔にはバレバレなんだろうけど、自分の口からは言いたくない。


『人の気持ち考えられねぇ奴』って悪魔に思われんのが嫌だから。

『言ったせいで悪魔を傷つけた』って自己嫌悪に陥りたくないから。


私の言動の原因は、悪魔を悲しませたくないって思う気持ちもあるけど、最終的には“自分のため”ってのが大きい。


……あぁ、そっか。

自分が一番大事な私は、悪魔に“あの事”を話す気なんて、最初からなかったんだ。

話した後の悪魔の反応を受け入れる自信がないんだから。


『キッカケさえあれば話せる』

そう自惚れてたけど、私は、話せるだけの度胸がない。

『キッカケがない』って逃げ道つくって、知らず知らずの内にまた自分を守ってただけ。


だから辛かった。


話してしまいたいのに態度でしか表せない、中途半端の臆病者だから。
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