「 」の法廷


 と、ベットから出ようとしたところで、細くて長い見知らぬ美少年の手に止められた。





「いいよ。寝てなよ。僕はただのサボリだから」



 彼はサボリを爽やかに口にした。

 とはいえ、はいそうですかと横になるわけにもいかずベットの上で正座して、その隣に「失礼」と彼が並んだ。



 端から見たらすんごくおかしなか光景だろうな……。







「ねえ」

「は、はい」

「世界は狭いって、思ったことない?」




 それは予想もしない問いだった。

 色んな意味で私は驚きを隠せなかった。





「日本って国の、とある県のとある市の、こんな小さな町の中だけが僕らの世界で。果たしてそれが永遠に繋がるものなのか」




 疑問に思ったことはない?

 彼はそんなことを言った。



 答えに、困った。


 だってそれはずっとずっと思ってきたこと。



 外国にも行ったことがなければ、この町。この市から飛び出したことがない私にとって、


 いっくらテレビを見ても友達の話を聞いても、他に場所があるとは考えられなかった。



 ──世界とはここで。

 他は全部異世界みたいなもの。


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