泡姫物語
絵馬をふたつ買って、愛子と少し距離を空けて願い事を書く。
私の書く言葉は決まっていた。

――愛子と私の恋がうまくいきますように

ありきたりだけど、絵馬なんて受験の合格祈願でしか書いたことないからそれ以上何を書けばいいのかもわからなかった。

「友紀、書けた?じゃあ掛けに行こうか」

「うん。せっかくだから隣同士の場所にしよう」

いっぱいありすぎてかける場所すら見つからない中で、下の端っこのほうにスペースを見つけてふたりの絵馬を掛けた。
ちらっと愛子の絵馬を見ると私と同じ言葉が書いてあった。

「私たち、こんなとこまでお揃いだね」

友紀と愛子の絵馬は仲良く重なり合って揺れていた。
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